Kのhimaブログ

暇人が気まぐれに語ります。

免疫系と抗体の産生・構造


これは、抗体について解説した分かりやすい、いい記事。
abcamさんのサイトから勝手に転載。


▼https://www.abcam.co.jp/protocols/the-immune-system-and-the-antibody-response-1
より
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抗体ガイド 1. 免疫系と抗体の産生



免疫系の種類


免疫系は、感染性の病原体など外来の物質から生体を防御するシステムです。
このシステムは以下の 2 つに分類されます。


非特異的な防御:先天性免疫系、自然免疫系(Innate または Non adaptive immune system)
特異的な防御:後天性免疫系、適応免疫系(Adaptive immune system)



非特異的な防御


非特異的な防御は、
皮膚・粘膜などによって物理的に行われるものと、
リゾチーム(Lysozyme)、補体タンパク質(Complement)などによって生化学的に行われるものとがあります。
また食細胞(Phagocytes)による捕捉によっても行われます。
非特異的な防御は特に病原体の感染初期において有効で、その侵入や広がりを防ぎますが、感染の繰り返しによって機能が強化されるということはありません。



特異的な防御


特異的な防御は、非特異的な防御を逃れた病原体や異物を除去するために、進化の途上で生物が獲得した機能です。
病原体の侵入を許した生物は、それらに対して特異的に反応し、さらにその情報を長期間にわたって記憶として保存しておくことができます。
この防御システム、後天性免疫系は、さまざまな細胞や分子種から構成されていますが、その中心を成す細胞はリンパ球(Lymphocyte)であり、中心を成す分子は抗体(Antibody)です。


後天性免疫系の反応は、液性免疫反応と細胞性免疫反応に分けられます。
リンパ球の主な種類は、


キラー T 細胞(細胞障害性 T 細胞、TC cell)、
ヘルパー T 細胞(TH cell)、
B 細胞(B cell)の 3 つですが、


これらのうち抗体分子を主役とした液性免疫反応には主に B 細胞とヘルパー T 細胞が関与し、
細胞が直接病原体や異物を攻撃する細胞性免疫には、主にキラー T 細胞とヘルパー T 細胞が関与します。
すなわちヘルパー T 細胞は両方の免疫反応に関与しています。
その関与は主に、サイトカイン(Cytokine)と呼ばれる分泌タンパク質を介して行われます。


上記 3 種類のリンパ球の表面上には、抗原に特異的に認識し結合するタンパク質である、受容体分子(レセプター分子)が発現しています。
1 個の細胞に発現しているのは 1 種類の抗原に特異的に結合するレセプター分子のみです。
これが後天性免疫の「特異性」を決めています。
なお、後天性免疫が異物として認識するのは病原体だけではありません。
自己以外の生体由来の組織も認識し、排除しようとします。
そのため骨髄や臓器の移植における拒否反応が起きます(細胞性免疫が中心です)。
生体の細胞表面上には主要組織適合抗原(Major histocompatibility complex; MHC)と呼ばれるタンパク質複合体が存在します。
これが生体個々の個性を決定します。
後天性免疫の特異性を決めているのはレセプター分子であると上で述べましたが、正確に言うと特異性を決めているのはレセプター分子と MHC の組み合わせです。


なお MHC にはクラス I とクラス II の 2 種類があります。
MHC クラス I は生体のほとんどの細胞の表面上に存在しますが、
MHC クラス II はマクロファージ(Macrophage)、ランゲルハンス細胞(Langerhans cells)、樹状細胞(Dendritic cells)などの抗原提示細胞(Antigen-presenting cells; APC)の表面にのみ存在します。



抗体の産生


抗体は外部から侵入した分子に特異的に結合するタンパク質で、B 細胞が分泌します。
タンパク質名としてはイムノグロブリン(Immunoglobulin)です。
「抗体」という言葉と「イムノグロブリン」という言葉は、ほぼ同じ意味で使われています。
なお、抗体が特異的に結合する分子を抗原(Antigen)と呼びます。
抗原と抗体の反応は、全ての免疫化学的手法の基礎を成すものです。


抗原に対する抗体の結合部位をパラトープ(Paratope)、
抗体が反応する抗原の領域をエピトープ(Epitope)と呼び、
パラトープとエピトープの結合の強さをアフィニティ(Affinity)と呼びます。


また抗体分子は複数の抗原結合部位を持ちますが、抗体分子、抗原分子全体としての結合の強さをアビディティ(Avidity)と呼び、解離定数 Kd として数値で表すこともできます。


生体に侵入した抗原はまず、マクロファージ、ランゲルハンス細胞、樹状細胞などの抗原提示細胞に取り込まれ、その細胞内で部分的に分解されます。
エピトープを含む分解された抗原の断片は MHC クラス II と複合体を形成し、細胞表面上に「提示」されます。
その後次のような過程を経て、抗体が産生されます。


抗原エピトープ-MHC クラス II 複合体に、それを特異的に認識するレセプター分子を有するヘルパー T 細胞が結合 
→ そのヘルパー T 細胞が増殖・活性化 
→ その抗原エピトープを特異的に認識するレセプター分子を有する B 細胞が、形質細胞(Plasma cell)へと分化・増殖 
→ 形質細胞が抗体を産生


一部の B 細胞は次の病原体の侵入に備え、素早い反応ができるように記憶細胞(Memory cell)として残ります。
抗体の産生と抗原・抗体反応は、マクロファージ、T 細胞、B 細胞による病原体への攻撃のクライマックスと言えます。
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▼https://www.abcam.co.jp/protocols/antibody-structure-and-isotypes-1
より
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抗体ガイド 2. 抗体の構造とアイソタイプ



抗体を構成する要素


抗体(Antibody)の本質は糖タンパク質の一種であるイムノグロブリン(Immunoglobulin)で、
抗体と対をなす単語である抗原(Antigen)と結合する能力を有します。
抗原とは生体外に由来するタンパク質や糖鎖などのいわゆる異物で、抗体は抗原に結合することによって、その異物を排除あるいは不活化します。
一種類の抗体が結合する抗原は一種類のみであり、特異的と言われる所以です。


イムノグロブリンの分子は、2 本の重鎖(Heavy chain)と 2 本の軽鎖(Light Chain)がジスルフィド結合(S-S 結合)によって結合し、形作られる Y 字型が基本単位です。
Y 字の上端 2 箇所に相当する部分は抗原結合部位(Antigen binding site)と呼ばれ、文字通り抗原に結合します。
結合する抗原が異なればこの抗原結合部位のアミノ酸配列および構造は異なります(その違いが抗体の違いです)。
イムノグロブリンには IgA、IgD、IgE、IgG、IgM の 5 種類のクラスがありますが、いずれもこの Y 字型の基本単位が 1 個~ 5 個集まって一つの分子を構成しています。



重鎖


イムノグロブリンの重鎖は二つの領域、可変領域(Variable region)と定常領域(Constant region)に分けられます。
可変領域は約 110 アミノ酸から成り、軽鎖の可変領域と共に、抗原結合部位を構成します。
上記の通りそのアミノ酸配列とタンパク質の構造は抗体によって異なります。
哺乳類では定常領域は α、δ、ε、γ、μ の 5 種類あり、この違い(と構成する Y 字型の基本単位の数)がクラスの違いとなります。
言い換えれば同じクラスの抗体であれば定常領域は同じです(IgA=α、IgD=δ、IgE=ε、IgG=γ、IgM=μ)。
α、δ、γ の定常領域は約 340 アミノ酸から成る3 つのドメイン、
μ と ε の定常領域は約 440 アミノ酸から成る 4 つのドメインから、
それぞれ構成されています。



軽鎖


イムノグロブリンの軽鎖は約 210 アミノ酸から成り、重鎖同様二つの領域、可変領域と定常領域に分けられます。
軽鎖の可変領域は重鎖の可変領域と共に、Y 字型の基本単位における抗原結合部位を構成します。
軽鎖は定常領域の違いにより λ(Lambda) と κ(Kappa)の 2 種類がありますが、これらはクラスの種類とは関係ありません。
なお哺乳類以外の脊椎動物では λ、κ 以外に ι(iota)も認められます。



Fab と Fc


イムノグロブリン分子はその構造上および機能上の違いから、Fab および Fc と呼ばれる二つの部位(フラグメント)に分けられます。
Fab の ab は Antigen binding の略で、抗原結合部位を含む部位であり、重鎖および軽鎖の可変領域で構成されています。
繰り返しになりますが、そのアミノ酸配列は抗体ごとに異なります。
Fc の c は Constant の略で、重鎖および軽鎖の定常領域で構成されているため、クラスが同じであればその配列は同じです。
Fc は免疫細胞の表面上の Fc レセプターへの結合や、補体系への関与などによって、免疫系のシグナル伝達に重要な役割を果たしています。



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図を眺めるだけでも楽しいね。