Kのhimaブログ

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銀河宇宙線と『雲の日傘効果』

銀河宇宙線の気候への影響。
神戸大学 兵頭政幸教授らの研究。
大学ジャーナルONLINE 2019年の記事。


銀河宇宙線がもたらす雲の日傘効果 神戸大学が気候への影響を示す証拠を発見 - 大学ジャーナルオンライン
より

2019年7月9日


銀河宇宙線がもたらす雲の日傘効果 神戸大学が気候への影響を示す証拠を発見


 宇宙から飛来する高エネルギー粒子、銀河宇宙線には、雲の生成を誘起して雲量を増加させる効果がある(スベンスマルク効果)。


 今回、神戸大学内海域環境教育研究センターの兵頭政幸教授らの研究グループは、銀河宇宙線が増加していた78万年前の地磁気逆転途中に、増えた下層雲の「日傘効果」で冬の季節風が強まった証拠を発見し、銀河宇宙線が気候変動の要因になりうることを示した。


 スベンスマルク効果により銀河宇宙線が気候に影響を及ぼす可能性があることは、以前から示唆されていたという。しかし、最近の気象観測データを使った検証では、銀河宇宙線量、雲量とも変化が微小なため、明確な証拠は得られていなかった。


 そこで本研究では、地磁気逆転に伴う地磁気強度の減少で銀河宇宙線が50%以上増加していた78万年前の約5000年間に着目。銀河宇宙線が大幅に増加した期間は、雲量も大きく増加し、強い雲の日傘効果で冬の季節風が強化していたはずとの仮説を立て、中国黄土高原のレス層(風で運ばれた砂塵の層)の粒度と堆積速度の変化を調べた。


 その結果、地磁気逆転途中の約5000年間では、砂塵の粒度が粗く、堆積速度が3倍以上増加していた痕跡を発見した。これは、雲の日傘効果で大陸が強く冷却され、シベリア高気圧が強化したことによって冬の季節風が強まったことを示唆するものだ。


 同じ時期、大阪湾堆積物コアの分析から年平均気温の低下、気温の年較差の増大も起こっていたとみられており、今回新たに冬の季節風の強化が見つかったことで、雲の日傘効果がこれら気候変化の原因であることがほぼ確実となった。


 本研究成果は、雲の気候への影響を見直すきっかけとなりそうだ。例えば、銀河宇宙線が減れば下層雲も減るため、逆日傘効果で温暖化が起こる可能性があり、現在の地球温暖化を理解する上でも雲の日傘効果は重要だといえる。


論文情報:【Scientific Reports】Intensified East Asian winter monsoon during the last geomagnetic reversal transition

https://www.nature.com/articles/s41598-019-45466-8


以下、補足。


■地磁気が逆転する際に地磁気強度が弱まり、地球に降り注ぐ銀河宇宙線が増える。銀河宇宙線は大気をイオン化し雲凝結核を増やして下層雲量を増加させる。その結果、雲の日傘効果によって地球が寒冷化すると考えられている。


■1997年にデンマークの研究者、スベンスマルクが銀河宇宙線の増減が雲の増減をもたらすことを80~90年代の観測データから明らかにした(スベンスマルク効果)。これに対する批判、論争は続いるが、兵頭教授らの研究グループは107万年前と78万年前の間氷期に起きた地磁気逆転で、地磁気強度が40%以下になると寒冷化が進むことを突き止め、2013年に発表した。産業革命以降の温暖化はCO2量の増加で説明できるが、それ以前の中世の温暖化とその後の寒冷化は説明できない。スベンスマルク効果では、その両方を説明することができる。


太陽活動が活発になると銀河放射線をはじき飛ばすため、雲量の増減を介して地球の気候に影響を与えている可能性がある。


(参考ページ
兵頭 政幸(HYODO Masayuki)――地磁気逆転と気候変動を探求・「チバニアン」命名へ | Research at Kobe