Kのhimaブログ

暇人が気まぐれに語ります。

レプリコン・ワクチンのひみつ

レプリコン・ワクチン、その仕組み。



荒川央 (あらかわ ひろし)博士のnote記事
https://note.com/hiroshi_arakawa/n/nd2df07ce123b
から、今回は前半を紹介します。


今回は、近頃SNS上等でも話題になっている自己増殖型mRNAワクチンについてお話ししようと思います。


セントラルドグマはフランシス・クリックが1958年に提唱した分子生物学の概念で、遺伝情報が「DNA → mRNA → タンパク質」の順に伝達されるというものです。本来、RNAからRNAをコピーする仕組みをヒト細胞は持っていません。セントラルドグマには例外が2つ見つかっています。一つはレトロウイルスで見つかった逆転写です。この反応は逆転写酵素によってRNAを鋳型としてDNAを合成 (逆転写) するものです。そして、もう一つの例外がRNAウイルスから見つかったRNA依存性RNA複製です。この仕組みにおいて、RNA依存性RNAポリメラーゼはRNAからRNAを合成します。


RNAウイルスの自己増殖やRNA合成の仕組みを利用すると、ワクチンもウイルスのように体内で増殖させる事が出来ます。言わば、自己増殖型mRNAワクチンとは殻の無いRNAウイルスのようなものなのです。最近の総説論文を参考にして、自己増殖型mRNAワクチンの仕組みを解説します。


自己増殖型RNAワクチン候補: mRNAワクチン開発のための代替プラットフォーム


ヒト細胞内でRNAを「自己増殖」させるためには、1) RNAからRNAを複製する酵素 (RNA依存性RNAポリメラーゼ)、2) その酵素が認識する制御配列 (プロモーターなど) が必要となります。自己増殖型mRNAワクチンのデザインを理解するためには、その元となったウイルスのゲノム構造を知る必要があるでしょう。


多くの自己増殖型mRNAワクチンは、プラス鎖アルファウイルスであるベネズエラウマ脳炎ウイルス (VEEV)、シンドビスウイルス (SINV)、またはセンリキフォレストウイルス (SFV) 等のゲノムに基づいています。プラス鎖RNAはタンパクに直接翻訳され得るRNAです。ワクチンの自己増殖にはウイルス由来のRNAポリメラーゼが使われます。


アルファウイルスは、トガウイルス科に属する一本鎖のプラス鎖RNAウイルスです。アルファウイルスゲノムは11-12 kbです。ゲノムの5′にはメチルグアニル化キャップ、3′にはポリAテールを持ちます。二つのオープンリーディングフレーム (ORF: タンパクに翻訳され得る塩基配列) からなり、1つはRNA複製複合体 (nsp1~4)、もう1つはウイルスの外殻 (カプシドおよびエンベロープ) をコードしています。


自己増殖型mRNAワクチンのデザインの一つの例は以下の図のようになります。



nsPはゲノムRNAの最初のORFからポリタンパク質として直接翻訳されます。4つのタンパクに分割されたnsP1~4は再び会合し、RNA複製複合体を構築します。それぞれのnsPには異なった役割があります。nsP1はキャップ酵素です。そしてnsP2はRNAヘリカーゼ兼RNAトリホスファターゼであり、また、宿主細胞のタンパク質発現の遮断を誘導します。nsP3はウイルスの複製に不可欠なウイルス-宿主、タンパク質-タンパク質相互作用を仲介します。nsP4がRNA依存RNAポリメラーゼです。


RNA複製複合体の働きは大きく分けて2つあります。1つはRNAゲノムの複製です。プラス鎖ゲノムの鋳型となる全長のマイナス鎖ゲノムを合成し、さらにそのマイナス鎖を鋳型としてプラス鎖を合成します。もう1つの働きはそれぞれの遺伝子のRNAを合成する事です。そこからRNA複製複合体や、ウイルスの外殻タンパクであるカプシドおよびエンベロープを産生します。自己増殖型mRNAワクチンのデザインは、ウイルスの外殻タンパクを抗原遺伝子で置き換えたようなものです。これはまさに「殻の無いウイルス」と呼べるでしょう。


ウイルスゲノムにはRNA合成やウイルス粒子へのパッケージングに重要な配列が含まれています。これらの要素は、シス作用型エレメント (CSE) と呼ばれます。CSEにはプロモーター機能も含まれます。二番目のORFのみのRNA合成にはサブゲノムプロモーター (SGP) が必要です。ここでは詳しく紹介しませんが、RNA複製複合体と抗原遺伝子を別々のRNAに分割する事も可能です (トランス増殖型RNAワクチン)。

という文章なんですが……


難しくてオレは読むのに苦労しました。
(みなさんは、どう?)


でも、これで解りました。


「自己増殖型ワクチンって、どうして増殖できるの?」
と思っていたのですが、


レプリコン・ワクチンって「人工ウイルス」なんですね。


「あんまり変なもの開発しないでよ」
と言いたくなります。


このワクチンの危険について書かれた後半は
次回紹介します。


後半は分かりやすいので、
次回もぜひ読んでくださいね。